特定技能で担当者がいない企業の対処法|兼任・採用・委託の判断基準

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特定技能外国人を受け入れたくても、支援責任者や支援担当者になれる担当者を社内で確保できない場合があります。担当者を用意できない場合は、既存社員の兼任、新規採用、登録支援機関への委託のいずれかを選ぶことになります。

担当者不在が受け入れの障害になる理由、兼任・新規採用・委託という3つの選択肢、自社対応と委託どちらを選ぶべきかの判断基準を、費用の目安や委託後に残る責任まで整理します。

合同会社エドミール代表社員・武藤拓矢

合同会社エドミール 代表社員

武藤 拓矢

2018年に外国人採用領域の大手企業に入社し、技能実習・特定技能・技人国の全領域に携わる。のべ700名以上の採用支援実績をもとに、登録支援機関「合同会社エドミール」を設立。2025年には4つの商工会議所で「外国人活用セミナー」の講師を務める。

武藤 拓矢のプロフィール

特定技能で担当者がいないと何が起きるのか

特定技能の受け入れでは、支援責任者と支援担当者の氏名や役職を1号特定技能外国人支援計画に記載する必要があり、この条件を満たす人が社内にいないと自社での支援実施自体が成立しません

支援責任者・支援担当者に求められる要件や業務内容は、支援責任者・支援担当者の役割で詳しく整理しています。

支援責任者・支援担当者の配置は支援計画の必須記載事項

出入国在留管理庁の運用要領では、支援責任者と支援担当者の氏名や役職などを1号特定技能外国人支援計画に記載することが求められています。2027年4月からは、常勤の役員または職員の中から選任することが体制要件として明確化される予定です。

中立性の要件で兼任できる人が限られる

出入国在留管理庁のQ&Aでは、代表取締役や外国人が所属する部署を監督する立場にある人、役員の配偶者や2親等内の親族などは、中立性を欠くため適格性がないとされています。中立性を欠く人物を無理に選任すると、支援計画そのものが適切と認められないおそれがあります。

支援担当者に求められる業務は生活全般に及ぶ

支援担当者が担う業務は、生活面から行政手続きまで幅広く定められています。

  • 入国前の事前ガイダンス
  • 出入国時の送迎
  • 住居確保・生活に必要な契約の支援
  • 生活オリエンテーション
  • 公的手続への同行
  • 日本語学習の機会の提供
  • 相談・苦情対応
  • 日本人との交流促進
  • 転職支援(人員整理等の場合)
  • 定期的な面談・行政機関への通報

これらすべてに1人で対応する必要はありませんが、幅広い業務に継続して対応できる体制が求められます。

担当者を用意できない場合の3つの選択肢

担当者がいない場合にとれる選択肢は、既存社員が兼任する、新たに担当者を採用する、登録支援機関に委託するの3つです。

既存社員が兼任する

人事や総務など生活相談の経験がある社員が支援担当者を兼任する方法で、支援責任者と支援担当者は兼任も可能です。ただし外国人本人の直属の上司や組織図上の縦のラインにある人は中立性の要件を満たせないため、兼任できる人は限られます。

新たに担当者を採用する

要件を満たす人材を新たに採用し、支援担当者として配置する方法です。新たに採用した人を選任する場合も、その人が役職員であることに加え、受入企業の支援体制が次のいずれかに該当する必要があります。

  • 受入企業に過去2年間、中長期在留者を適正に受け入れ・管理した実績があり、役職員から支援責任者・支援担当者を選任すること
  • 過去2年間に中長期在留者の生活相談等に従事した経験を持つ役職員から選任すること
  • これらと同程度に支援業務を適正に実施できる体制を備え、役職員から選任すること

採用や教育にかかる期間とコストも発生するため、受け入れ開始までに十分なリードタイムを確保しましょう。自社で支援体制を整える場合に必要な要件は、自社支援に必要な要件で確認できます。

登録支援機関に委託する

支援業務の一部または全部を登録支援機関に委託する方法です。支援体制の基準を満たしたものとみなされるのは全部委託の場合であり、一部委託では受入企業自身が支援体制の基準を満たす必要があります。

仕組みの詳細は登録支援機関への一部委託の仕組みで解説しています。

自社対応と委託、どちらを選ぶべきか

自社対応と委託のどちらを選ぶかは、受入人数・継続期間・社内の人員体制を照らし合わせて判断します。要件を満たす役職員を社内で選任し、継続的に支援できる体制を確保できるかどうかが最初の分かれ目になります。

数名規模の企業では専任の自社支援体制が組みにくい

支援担当者は、外国人が十分に理解できる言語での生活相談や、緊急時対応まで幅広い支援に対応する必要があるため、数名規模の企業で専任の体制を組むのは容易ではありません。人事担当と現場責任者を兼ねている企業では、外国人本人の直属の上司にあたってしまい、中立性の要件を満たせないケースがあります。

受入人数と継続方針で判断する

受け入れ人数が多く、複数年にわたって外国人材の受け入れを続ける方針であれば、要件を満たす担当者を社内で選任する自社対応も選択肢に入ります。反対に初めての受け入れや数名規模にとどまる見込みの場合は、体制構築の負担が小さい委託から始めるという判断もできます。

比較項目自社対応(兼任・新規採用)委託(登録支援機関)
支援体制の基準受入企業自身が満たす必要がある全部委託なら受入企業が満たしたものとみなされる
支援責任者・支援担当者要件を満たす役職員を社内で選任する必要がある社内で選任しなくても進められる
定期届出の提出受入企業(特定技能所属機関)が提出する全部委託でも受入企業が提出する立場は残る
委託費の目安かからない(担当者の人件費等は別途発生)令和4年9月末時点の暫定値:1人当たり月額平均28,386円

自社対応が現実的かどうかのセルフチェック

自社対応を選べるかどうかは、次の項目を満たせるかで見極められます。

  • 受入企業に過去2年間の中長期在留者の受入れ・管理実績があるか、役職員に同期間の生活相談業務経験があり、その役職員から支援責任者・支援担当者を選任できること
  • 外国人本人の直属の上司や役員の配偶者・近親者にあたらない、中立的な立場の人を支援担当者にできること
  • 外国人が十分に理解できる言語での生活相談や緊急時対応まで、継続的に対応できる人員を確保できること
  • 定期届出や支援記録の作成・保管を、担当者の異動や退職後も継続できる体制があること

満たせない項目が多いほど、委託を検討する現実的な理由になります。

委託した場合と自社対応した場合の費用差

登録支援機関への支援委託費は、出入国在留管理庁が令和4年9月末時点で集計した暫定値で1人当たり月額平均28,386円でした。自社対応では委託しない範囲の委託費はかかりませんが、担当者の人件費や体制構築にかかる費用が新たに発生します。

登録支援機関への委託費の目安

出入国在留管理庁が令和4年9月末時点の対象者について集計した暫定値では、特定技能外国人1人当たりの月額支援委託料は平均28,386円でした。

出典:出入国在留管理庁『技能実習制度及び特定技能制度の現状について』(技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議・第1回資料3)

  • 最多価格帯: 2万円〜2万5000円(25.3%)
  • 3万円以下が全体の約90%

実際の金額は登録支援機関や地域、支援内容によって異なるため、複数の登録支援機関から見積もりを取ることをおすすめします。詳しい費用の内訳は、特定技能の費用相場で確認できます。

自社対応でかかる費用と負担

自社対応では委託費はかかりませんが、担当者の人件費、通訳・教材の準備費、記録管理の手間などが新たに発生します。実際にどちらが安くなるかは受入人数や社内の稼働状況によって変わるため、個別に試算して比較する必要があります。

委託しても受入企業の責任がなくなるわけではない

全部委託後は、登録支援機関が委託された支援業務を支援計画に基づいて実施しますが、受入企業は支援計画を作成し、支援状況を取りまとめた定期届出を提出する立場であり続けます。委託しているからといって、受け入れそのものへの関与がなくなるわけではありません。

委託して実務を任せたあとも、届出内容や支援の実施状況を社内で把握できなければ、届出の遅延や記載漏れにつながりかねません。義務的支援10項目の全体像は、義務的支援10項目の全体像で確認できます。

担当者不在のまま受け入れを進めるリスク

自社支援や一部委託を選びながら、必要な担当者や支援体制を確保しないまま受け入れを進めると、定期届出や支援記録の漏れによる行政上のリスクと、生活支援不足による定着への悪影響が同時に生じかねません。全部委託であれば、この基準は受入企業が満たしたものとみなされます。

定期届出や支援記録の漏れによる行政上のリスク

必要な支援体制を整えないまま受け入れを続けると、定期面談や届出の実施記録が抜け落ちやすく、出入国在留管理庁への定期届出が遅れる原因になります。特定技能所属機関からの届出が適正に履行されていない場合、その機関は特定技能外国人を受け入れられなくなるおそれがあります。

生活支援の不足による定着への悪影響

生活オリエンテーションや相談対応が不十分だと、外国人本人が生活上・就労上の問題を解決するために必要な支援を受けられないおそれがあります。担当者不在のまま進めず、必要な支援を実施できる体制をあらかじめ確保しておく必要があります。

よくある質問

支援担当者は兼任でも問題ありませんか?
支援責任者と支援担当者は兼任できますが、外国人本人の直属の上司、代表取締役、外国人が所属する部署を監督する長など、本人を監督する立場にある人は中立性の要件を満たさないため選任できません。
支援担当者になれないのはどんな人ですか?
代表取締役や外国人が所属する部署を監督する立場にある人、受入企業役員の配偶者や2親等内の親族などは、中立性の要件により支援担当者になれません。
委託すれば自社の担当者は不要になりますか?
支援業務を全部委託すれば実務は登録支援機関が担いますが、受入企業は支援計画の作成者・定期届出の提出者としての立場が残るため、社内で進捗を把握できる担当を置くことをおすすめします。
受入人数が少なくても登録支援機関に委託できますか?
受入人数にかかわらず委託は可能です。初めての受け入れや数名規模の場合は、体制構築の負担が少ない委託から始めるという選択肢もあります。
一部の業務だけ自社対応にして、残りを委託することはできますか?
義務的支援の一部だけを登録支援機関に委託し、残りを自社で対応する一部委託も可能です。ただし支援体制の基準を満たしたものとみなされるのは全部委託の場合であり、一部委託では受入企業自身が支援体制の基準を満たす必要があります。
既存社員を兼任させる場合、教育や研修は必要ですか?
中立性の要件を満たす社員であっても、支援計画に沿った実務対応や記録の残し方など、実務面の教育・研修は別途行っておくことをおすすめします。