外国人の労務管理チェックリスト|採用前・入社時・雇用後の実務

外国人の労務管理チェックリスト|採用前・入社時・雇用後の実務

公開日
最終更新日

外国人の労務管理では、日本人と同じ労働法令に加えて、在留資格と届出を確認します。国籍だけを理由に賃金や労働条件を変えることはできません。

700名以上の外国人採用支援に携わった実務では、入社前の確認を3点に分けています。在留資格、実際の担当業務、本人が理解した労働条件です。3点を同じ担当表で確認すると、労務と在留管理の分断を防ぎやすくなります。人事が在留カードだけを確認し、現場が別の作業を割り当てる状態は避けなければなりません。確認日、担当者、根拠書類、本人への説明言語を一つの台帳に記録し、変更時は人事と現場責任者の双方が更新します。入社後は在留期限、勤怠、保険、届出、相談記録を同じ対象者IDで追えるようにします。

合同会社エドミール代表社員・武藤拓矢

合同会社エドミール 代表社員

武藤 拓矢

外国人採用領域で技能実習・特定技能・技人国の採用支援に携わり、700名以上を支援。受入れ企業の採用準備と定着支援の実務をもとに解説します。

武藤 拓矢のプロフィール

外国人労務管理の基本

労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、社会保険関係法令は、原則として外国人にも適用されます。

厚生労働省の外国人雇用案内では、外国人雇用管理指針を公開しています。募集、採用、労働条件、安全衛生、保険、解雇防止などが対象です。

社内では、人事だけでなく現場責任者にも在留期限と担当可能な業務を共有します。個人情報は必要な範囲で管理してください。

採用前の確認

在留資格と担当業務を照合する

在留カードの表裏、在留期限、就労制限、資格外活動許可を確認します。在留資格の名称だけで判断せず、実際の職務が許可範囲に入るかを確認してください。

労働条件を理解できる言葉で示す

賃金、労働時間、休日、業務、勤務地、契約更新、退職を説明します。日本語の署名だけを受け取らず、通訳や翻訳を使って理解を確認します。

  • 基本給と固定残業代を分ける
  • 控除する住居費や食費を明記する
  • 転勤・配置転換の範囲を示す
  • 母国語版と日本語版の内容を一致させる

入社時の手続

  1. 雇用契約書と労働条件通知書を交付する
  2. 雇用保険、健康保険、厚生年金の資格を確認する
  3. 外国人雇用状況をハローワークへ届け出る
  4. 税、給与振込、緊急連絡先を登録する
  5. 安全衛生教育を理解できる方法で行う

厚生労働省の外国人雇用状況届出案内に沿って、雇用保険の被保険者は資格取得届・喪失届に必要事項を記載します。雇入れは翌月10日まで、離職は翌日から起算して10日以内です。

雇用保険の被保険者でない外国人は、外国人雇用状況届出書を使います。雇入れ、離職のどちらも翌月末日までに届け出ます。届出事項は在留カード等で確認しますが、届出時にカード等の写しを添付する必要はありません。

社会保険の扱いは外国人の社会保険加入で詳しく確認できます。

雇用後の管理

勤怠と賃金を同じ基準で管理する

労働時間、休憩、休日、割増賃金を客観的に記録します。農業など一部の労働時間規定に例外がある業種でも、安全配慮や雇用契約の管理は必要です。

在留期限と届出を台帳で管理する

更新申請の準備開始日、在留期限、転職・退職日を記録します。退職時も外国人雇用状況届出が必要です。

相談経路を複数用意する

直属の上司だけでなく、人事、通訳、外部相談先を示します。ハラスメントや賃金の相談をしたことを理由に、不利益な扱いをしてはいけません。

社内担当者の役割は外国人雇用管理の担当者設計でも整理しています。

特定技能1号の追加対応

特定技能1号では、通常の労務管理に加えて、支援計画と分野別の基準があります。制度の基本は特定技能制度の解説で確認してください。

  • 日本人と同等以上の報酬
  • 1号特定技能外国人支援計画の作成と実施
  • 定期面談と相談記録
  • 所属機関・支援機関の定期・随時届出
  • 各分野の協議会や上乗せ基準

支援を登録支援機関へ委託しても、雇用主の労務管理責任は残ります。委託範囲は特定技能の支援サービスで確認できます。

よくある質問

在留カードのコピーは保管できますか?
就労可否を確認した記録として必要な範囲で保管できます。利用目的、取得項目、閲覧権限、保管期間、廃棄方法を社内規程で決め、不要な個人情報は収集しません。
日本語が分からない本人の署名だけで足りますか?
署名があっても、労働条件を理解していなければトラブルになります。翻訳、通訳、図解を使い、質問を受ける時間を設けてください。

まとめ

外国人の労務管理は、在留資格、労働条件、届出、保険、勤怠、安全、相談の7点を時系列で管理します。国籍で別運用にせず、理解のための言語支援を追加してください。

法令判断が必要な事項は、労働局、入管庁、社会保険労務士、行政書士など所管に応じた専門家へ確認します。